【ピットブルや土佐犬】海外で禁止されている犬種の”本当の危険性”を徹底解説

「ピットブル」や「土佐犬」という犬種を聞いたことがありますか?これらの犬種は、海外の多くの国で飼育が禁止または厳しく制限されています。でも、本当にこれらの犬種は生まれながらにして危険なのでしょうか?今回は、海外で禁止されている犬種について、その背景と本当の危険性について詳しく見ていきます。
海外で規制されている主な犬種

イギリスの危険犬種法
イギリスでは1991年に危険犬種法が制定され、闘犬用に繁殖された特定のタイプの犬の飼育を禁止しています。対象となる犬種は以下の通りです。
- アメリカン・ピット・ブル・テリア
- 土佐犬
- ドゴ・アルヘンティーノ
- フィラ・ブラジレイロ
興味深いのは、純血種だけでなく「その犬種っぽい見た目」の犬も規制対象になるという点です。つまり、見た目で判断されてしまうケースもあるということですね。
アメリカの特定犬種規制法
アメリカでは州や地域によって異なる規制があり、700を超える都市で特定犬種規制法が制定され、主にピットブルタイプの犬種に飼育制限が設けられています。ただし、最近では21の州が犬種による規制を禁止し、個別の犬の行動に基づいた規制を支持する動きも出てきています。
日本の特定犬制度
日本では国レベルでの飼育禁止はありませんが、茨城県、佐賀県、札幌市など4つの自治体が条例で特定犬制度を実施しています。これらの自治体で共通して指定されている犬種は以下の8種です。
- 秋田犬
- 土佐犬
- ジャーマン・シェパード
- グレート・デーン
- セント・バーナード
- アメリカン・スタッフォードシャー・テリア(ピットブル)
- アメリカン・スタッフォードシャー・テリア(ピットブル)
- 紀州犬
- ドーベルマン
特定犬の飼育には、頑丈なおりの使用や「特定犬」の表示が義務付けられており、違反した場合の罰則も設けられています。
これらの犬種が規制される理由

咬傷事故の統計
アメリカでは2005年から2019年までの15年間で、犬の咬傷事故によって521名の方が亡くなっています。ピットブルは、こうした重大事故の統計で上位に名を連ねることが多い犬種です。
日本でも昭和54年に最初に特定犬制度を導入した茨城県では、放たれていた大型犬による咬傷死亡事故が起きたことが実施のきっかけでした。
身体能力の高さ
これらの犬種が規制される大きな理由の一つは、その圧倒的な身体能力です。
- 筋肉質な体格:ピットブルなどは闘犬として品種改良されてきた歴史があり、非常に強靭な筋肉を持っています
- 強力な顎の力:ピットブルの噛む力は犬種最強レベルと言われており、牛の大腿骨を折ることができるほどです
- 攻撃時の執着性:一度噛みついたら離さないという習性があり、相手が抵抗するほど興奮して離さなくなる特徴があります
闘犬の歴史
これらの犬種の多くは、人と共に働く能力を持つよう品種改良された犬種ですが、強さゆえに悪用されてきた歴史があり、そこから”危険な犬”というレッテルが生まれてしまいました。
本当に犬種が問題なのか?

ここで重要な疑問が浮かび上がります。本当に犬種そのものが危険なのでしょうか?
規制の効果に関する疑問
動物保護団体ASPCAは、犬種による規制は効果が高いという根拠が乏しく、犬の福祉にも悪影響を与えるとして反対の立場をとっています。実際、各自治体にお伺いしたところ、咬傷事故件数に関して制定前後で減少が認められたところはありませんでしたという調査結果もあります。
飼い主の責任が本質
ドイツでは2001年に危険犬種に対する規制が設けられましたが、その後犬行動学者や獣医師たちによって、危険な犬は犬種に由来するものではなく飼い主の飼育方法が起因となることが証明されました。
現在では危険犬種に対する規制に代わり、犬の飼い主免許制度を導入する流れが起きており、飼い主が正しい知識を持つことに重点が置かれています。
個体差の重要性
プロのドッグトレーナーによると、危険犬種とされる犬種をトレーニングしてきた経験から、すべての危険犬種が凶暴でどうしようもないということはなく、犬の個体差によると指摘しています。
ピットブルは家族に対してはとても従順で、まるで人間の子どものようにふるまうこともあり、信頼関係ができると強い絆が生まれます。適切に飼育され、しっかりと教育を受けた場合、非常に愛情深い家庭のパートナーとなることができるのです。
日本で起きた実際の事故事例
理論だけでなく、実際に起きた事故も見ておく必要があります。

沖縄での死亡事故(1995年)
1995年4月、沖縄県石川市(現・うるま市)で、公園で遊んでいた女児2人が放し飼いされていた生後8ヶ月と1年4ヶ月のピットブル2頭に襲われ、1人が死亡、1人が大怪我をする痛ましい事故が発生しました。
千葉県での逃走事故(2020年)
2020年5月、千葉県銚子市でピットブルが逃げ出し、近所の女性がかまれて全治40日の大けが、ペットの小型犬が死亡する事故が発生しました。この事故では、飼い主が狂犬病の予防接種を受けさせていなかったことも問題となりました。
横浜市での再発事故(2023年)
2023年1月、横浜市でピットブルが逃げ出し、近くの女性の足に噛みつきケガを負わせましたが、実はこの犬は過去にも2回通行人に噛みついていたという再発事故でした。
栃木市での連続被害(2024年)
2024年4月、栃木市内の路上でピットブルに噛まれて男女4人が軽傷を負う事故が発生し、被害者の一人は「すごい勢いでポメラニアンを引きずり回していた」と証言し、「あごの力が強く、とにかく離れなかった」と恐怖を語っています。
これらの事故に共通しているのは、適切な管理がされていなかったという点です。
本当の危険性とは何か

問題は犬種ではなく飼育環境
特定犬種に定められている犬全てが必ずしも危険であるということではなく、一般的な小型犬や中型犬を飼うよりも高い管理能力や危機意識が飼い主さんに求められるということです。
日本では、犬種にかぎらず、犬に社会性を身につけさせない飼育方法をとったり、繋ぎ飼育をし続けたり、閉じ込め飼育をし続けることにより、本気で噛む犬が育ってしまうことは多々あります。
どんな犬でも事故を起こす可能性がある
実は危険な見た目として押収された犬と、禁止されている犬種ではないが制御不能により押収された犬が、ほぼ同数だったという記録もあります。つまり、小型犬であっても適切な飼育がされていなければ、重大な事故につながる可能性があるのです。
「犬種差別」という問題
日本をはじめ多くの国や地域では、ピットブルを含む特定の犬種が危険犬種として飼育を制限されたり禁止されたりする条例があり、これらの規制は過去の咬傷事故を受けての措置ですが、すべての個体に適用されるため、無実の犬まで不利益を被っているのが現実です。
こうした規制のために飼育困難となった飼い主が犬を放棄し、その結果保護施設に持ち込まれる犬が増えるという悪循環も起きています。
私たちができること

飼い主としての責任
もしこれらの犬種を飼う場合、以下のような対策が必要です。
- 適切なしつけとトレーニング:子犬の頃から社会性を身につけさせる
- 確実な管理体制:頑丈なリードと首輪の使用、確実な係留
- 十分な運動と刺激:エネルギーを適切に発散させる
- 他者への配慮:散歩時は口輪の装着を検討する
- 継続的な観察:興奮しやすい場面を把握し、避ける
ピットブルをはじめとする闘犬種や大型犬は、咬傷事故が起きた場合大きなケガにつながる可能性が非常に高く、一般的な犬以上に安全への配慮が求められます。
社会全体での取り組み
本当に問題なのは特定の犬種ではなく、飼い主の犬に対する意識や知識です。生活の安全のために私たちにできることは、無責任な飼い主に対処することであり、問題は犬にあるのではなく人間側にあることを理解する必要があります。
まとめ:規制される犬種の真実
海外で禁止されている犬種は、確かに強力な身体能力を持ち、事故が起きた場合の被害が大きくなる可能性があります。しかし、犬種そのものが生まれつき危険というわけではありません。
問題の本質は:
- 適切な飼育管理ができていない飼い主
- 犬の特性を理解せずに飼い始めること
- 社会性を身につけさせない飼育方法
- 逃走や事故を防ぐための対策不足
アメリカやイギリスでは、犬種による規制が事故の減少に効果はないとも言われ、法律の見直しの機運もあります。
どんな犬種であっても、飼い主がその犬の性格や特性をしっかりと見極め、適切な飼育・しつけを行うことが最も重要です。特に力の強い犬種を飼う場合は、より高い管理能力と責任感が求められることを忘れてはいけません。
犬は人間の最良の友になれる存在です。しかし、それは人間が責任を持って接したときだけ。「この犬種は危険だから」ではなく、「どう飼えば安全で幸せな関係を築けるか」を考えることが、人と犬の共生社会への第一歩なのです。

