犬の『レプトスピラ症』とは。どんな症状?治療費、致死率は?人にも感染するってホント?

目次

レプトスピラ症とは

レプトスピラ症は、レプトスピラという細菌によって引き起こされる感染症で、犬においても重要な病気の一つです。この細菌は主に水や土壌を介して広がり、感染した動物やその排泄物(尿など)から感染源が拡がることがあります。

レプトスピラは、細長い螺旋形をした細菌で、感染した動物(犬、野生動物、家畜など)の尿に含まれていることが多いです。汚染された水や土壌に触れた犬が感染することがあります。特に湿気が多く、清潔でない環境で感染が広がりやすいです。

主な感染経路

1 汚染された水や土壌

  • レプトスピラ菌は主に動物の尿中に排泄され、その尿が水源(池や川、湖など)に流れ込むことがあります。犬がこれらの汚染された水を飲んだり、浸かったりすることで感染することがあります。
  • レプトスピラ菌は湿気の多い環境や土壌中でも生存できるため、犬が汚れた土壌や泥に触れることによっても感染する可能性があります。

2 傷口や粘膜からの感染

  • 人が感染源である水に触れたり、傷口や目、鼻などの粘膜から細菌が侵入することによって感染することもあります。

3 感染動物との接触
野生動物(例えば、ネズミやウサギなど)や感染した犬との接触も感染源となることがあります。感染動物の尿が土壌や水に広がり、犬がその場所で感染することがあります。

レプトスピラ症は感染が進行すると肝臓や腎臓に深刻なダメージを与えることがあるため、予防や早期の発見が非常に重要です。予防接種が有効な方法の一つとされていますので、犬が高リスク地域に行く場合は、獣医師と相談して予防接種を受けることをおすすめします。

症状は?

犬がレプトスピラ症にかかった場合、症状は軽度から重度までさまざまで、場合によっては命に関わることもあります。感染した犬の症状は、初期にはインフルエンザや風邪に似たものが多く、進行するとより深刻な健康問題を引き起こします。

1. 初期症状(軽度〜中等度

  • 発熱: 体温が高くなることがあります。
  • 元気がない: 活力が低下し、いつもと違って元気がなくなる。
  • 食欲不振: 食べる量が減少したり、全く食べなくなったりすることがあります。
  • 嘔吐: 食後や空腹時に嘔吐することがある。
  • 下痢: 水様便や血便が見られることもあります。
  • 脱水: 嘔吐や下痢により脱水症状が現れることがあります。

2. 進行した症状(重度)

レプトスピラ症が進行すると、以下のような重篤な症状が現れることがあります。

  • 黄疸(おうだん): 皮膚や目の白い部分(結膜)が黄色くなる。これは肝機能障害を示唆する兆候です。
  • 急性腎不全: 腎臓が機能しなくなると、尿が出なくなったり、腹部が膨らんだり、食欲がさらに減少します。
  • 出血: 鼻血、歯茎からの出血、血尿などが見られることがあります。
  • 呼吸困難: 肺や心臓に問題が起こると、呼吸が浅くなったり、速くなったりすることがあります。
  • 痛みや敏感さ: 関節や筋肉に痛みが生じ、触れると痛がることがあります。

治療費はどれくらい?

犬のレプトスピラ症の治療費は、病気の進行具合や治療に必要な期間、動物病院の地域や施設によって異なりますが、以下の要素が費用に影響を与えます。

1 診察料

・初診料:約2,000円~5,000円程度
 診察にかかる基本的な費用です。

2 検査費用

レプトスピラ症の診断には、血液検査や尿検査、場合によってはPCR検査(遺伝子検査)が必要です。

  • 血液検査: 約3,000円~10,000円程度
  • 尿検査: 約1,000円~3,000円程度
  • PCR検査: 約5,000円~15,000円程度(検査内容による)

3 入院費用

レプトスピラ症が重症化すると、入院治療が必要です。特に腎臓や肝臓が影響を受けている場合は、点滴や透析が必要になることがあります。

入院費用: 約5,000円~20,000円/日
※重症の場合は、集中治療が必要なため、高額になることがあります。

4 抗生物質と治療薬

レプトスピラ症の治療には、抗生物質(ドキシサイクリン、ペニシリン系など)が使われます。これらは経口薬や注射で投与されます。

  • 抗生物質の費用: 約1,000円~5,000円(投薬期間による)
  • 点滴治療: 約2,000円~5,000円/回(症例によって異なる)

その他の治療

透析治療(腎不全が進行した場合): 約10,000円~30,000円/回
※腎機能が完全に低下すると透析が必要になることがあり、これは非常に高額な治療です。

5 総額の目安

軽度の場合、診察や検査、薬の処方で済むこともあり、治療費は約1万円~3万円程度になることがあります。

しかし、重症化した場合、特に入院や集中治療、透析が必要になると、治療費は10万円以上、場合によっては20万円~30万円以上になることもあります。特に腎不全や肝機能障害が進行した場合、治療にかかる時間や費用が増えるため、予算の準備が必要です。

レプトスピラ症の致死率は?

犬のレプトスピラ症の致死率は、治療の早さや症状の重篤さに大きく影響されます。以下の情報を基に、致死率について詳しく説明します。

軽症〜中等症の場合

早期に診断・治療が行われれば、レプトスピラ症は比較的回復しやすいです。この場合、適切な抗生物質の投与や点滴治療で回復が期待でき、致死率は低いとされています。軽度〜中等度の感染であれば、早期の治療が行われる限り、致死的な結果に至ることは稀です。

致死率: 約 1〜5%(治療が適切に行われた場合)

重症の場合(腎不全、肝不全など)

レプトスピラ症が進行し、特に腎不全や肝不全が引き起こされると、致死率は高くなります。特にウェイル病という重篤な状態になると、生命に危険が及ぶことがあります。この場合、腎臓や肝臓の機能が深刻に障害され、透析や集中治療が必要となることがありますが、治療が遅れると致死的な結果を招く可能性があります。

致死率: 約 10〜30%(治療が遅れると致死的になることが多い)

感染源や症例の進行具合

感染の経路や犬の健康状態、免疫力などによって致死率は変動します。例えば、腎不全や肝不全が急激に進行した場合や、免疫が低下している犬では、致死率が高くなることがあります。

  • 高齢犬や免疫力が低下している犬、または基礎疾患がある犬(例:糖尿病、心臓病、腫瘍など)では、重症化しやすく、致死率が高くなる傾向があります。

早期発見と治療の重要性

レプトスピラ症は、早期に診断して治療を開始すれば、致死率は低く抑えることができます。逆に、治療が遅れると、腎不全や肝不全が進行し、致死的な結果に至ることが多くなります。

レプトスピラ症は犬にとって非常に危険な病気ですが、早期発見・早期治療が成功すれば、命を守ることができます。

人にも感染するって本当?

レプトスピラ症は人にも感染することがあります。人間がレプトスピラに感染することは「人獣共通感染症」と呼ばれ、動物から人への感染が発生することがあります。主に次のような方法で人が感染する可能性があります。

人への感染経路

1 汚染された水や土壌との接触

レプトスピラ菌は動物の尿中に存在し、汚染された水源や湿った土壌、泥などに広がります。人がこれらに触れたり、誤って口に入れたりすることで感染する可能性があります。特に洪水後や湿地帯で作業をしている場合などにリスクが高くなります。

2 傷口や粘膜との接触

皮膚に傷がある場合や、目、鼻、口などの粘膜を通じて感染することもあります。たとえば、汚染された水や土に触れた手で目をこすったり、口に入ったりすることで感染が広がることがあります。

3 動物との直接接触

レプトスピラ症の感染源となる動物(例えば、犬、ネズミ、野生動物)と直接的な接触を通じて感染することもあります。動物の尿に触れたり、動物の体液に接触することで感染することがあります。

予防方法

水や土壌に接触しない

  • 汚染された水源や湿った場所(池、川、泥沼など)には近づかない。
  • 汚染された可能性がある水や土壌で作業をする場合は、防水手袋やブーツを着用する。

動物の尿や体液との接触を避ける

  • 野生動物やペットの尿に触れないように注意する。
  • 特にネズミや犬、豚などが感染源になりやすいため、これらの動物と接する際は手袋や適切な防護具を着用する。

ペットや家畜の衛生管理

  • ペットや家畜がレプトスピラ症に感染しないように、定期的なワクチン接種を行い、健康管理を徹底する。

防護具の使用

  • 汚染の可能性がある環境(農作業、衛生管理、動物の世話など)では、長袖・長ズボン、防水手袋、防水靴などの保護具を使用する。

まとめ

レプトスピラ症は、汚染された水や動物の尿を通じて感染する病気です。犬が感染源となることも多いため、犬のワクチン接種や衛生管理が重要です。人間は特に水域での接触や野生動物との接触に注意が必要で、感染を防ぐためには予防策を徹底することが求められます。感染が疑われる場合は早期に医療機関を受診し、適切な治療を受けることが重要です。

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